2011年 06月 13日
固く握りしめた指、濡れるほど汗をかいている。他に漏れたら大事になると、潜めた声が災いしたのか。粗末なむき出しの寝台に横たわり、尋常でない様子で胸をかきむしるタムドクに、スジニの言葉は届いていないようだった。
「わたしです!ねえ、大丈夫?お願いだから目を覚まして!」
とうとう、かじりつくように身を起こしたタムドクは正気を保っていない。人はこんな風に悪夢に捕まるものか?指先が恐れに震えた。焦ったスジニは、精一杯に腕を開いて広い肩を抱きとめた。
声もなく泣いているのは誰だ?炎は人に喜びを運ぶものだった。それは暖かさと光を与えるものだったのに。
もう、お前しか見ない。紅玉を胸に抱き、哀しみに灼かれて中空に浮かぶお前しか──わたしが与えた火の力が、憎しみと哀しみとを増幅させてしまった。それを射殺す運命の痛みよ、永久に我を苛みたまえ──そして汝を救いたまえ──幾千年の輪廻から──
この地を燃やし尽くしてしまうほどに激しい母の怒り。その陰でのたうつどす黒い恨み、妬みに、見て見ぬ振りをしたのはわたしだ。人のこころを解さなかったわたしの──
空に浮かんだお前は、産褥の血に濡れたまま、最期にはかすかに笑ったのだ。わたしは谷底に落ちる寸前の子を受け止めた。そうだ。そして今回もまた、わたしは子を受け止めた…
深い谷底に放り込まれようとした我が子を、わたしは押し戻した──
天の血を引く我が子よ、お前を身ごもった母は?
お前の母の顔を見せてくれ、
わたしには、それが──
爪を立てられて、スジニは歯を食いしばった。王様に尋常ではないことが起きている。その思いだけでがっしりした体を抱いている。背に食い込んだ爪の痛みは、いつしか別種の幻覚を運んできた。
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あのシーンは結構深いと思うんですがねぇ…
キハが谷底に身を投げようとして死ねないシーン(でしたっけ?)←言ってる割にウロおぼえ
天孫を宿したという理由で自決も出来ない、
それが黒朱雀化したセオと重なる、そんなシーンを文字化できたらいいかなあ。
そういう野望も抱きつつ。
…自分なりの解釈で、全編ノベライズしたら面白いかしら。
でもでも、雀さんの『幻双朱記』を拝読していると
とうていこんな長丁場は自分には無理だと思ってしまう。
「わたしです!ねえ、大丈夫?お願いだから目を覚まして!」
とうとう、かじりつくように身を起こしたタムドクは正気を保っていない。人はこんな風に悪夢に捕まるものか?指先が恐れに震えた。焦ったスジニは、精一杯に腕を開いて広い肩を抱きとめた。
声もなく泣いているのは誰だ?炎は人に喜びを運ぶものだった。それは暖かさと光を与えるものだったのに。
もう、お前しか見ない。紅玉を胸に抱き、哀しみに灼かれて中空に浮かぶお前しか──わたしが与えた火の力が、憎しみと哀しみとを増幅させてしまった。それを射殺す運命の痛みよ、永久に我を苛みたまえ──そして汝を救いたまえ──幾千年の輪廻から──
この地を燃やし尽くしてしまうほどに激しい母の怒り。その陰でのたうつどす黒い恨み、妬みに、見て見ぬ振りをしたのはわたしだ。人のこころを解さなかったわたしの──
空に浮かんだお前は、産褥の血に濡れたまま、最期にはかすかに笑ったのだ。わたしは谷底に落ちる寸前の子を受け止めた。そうだ。そして今回もまた、わたしは子を受け止めた…
深い谷底に放り込まれようとした我が子を、わたしは押し戻した──
天の血を引く我が子よ、お前を身ごもった母は?
お前の母の顔を見せてくれ、
わたしには、それが──
爪を立てられて、スジニは歯を食いしばった。王様に尋常ではないことが起きている。その思いだけでがっしりした体を抱いている。背に食い込んだ爪の痛みは、いつしか別種の幻覚を運んできた。
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あのシーンは結構深いと思うんですがねぇ…
キハが谷底に身を投げようとして死ねないシーン(でしたっけ?)←言ってる割にウロおぼえ
天孫を宿したという理由で自決も出来ない、
それが黒朱雀化したセオと重なる、そんなシーンを文字化できたらいいかなあ。
そういう野望も抱きつつ。
…自分なりの解釈で、全編ノベライズしたら面白いかしら。
でもでも、雀さんの『幻双朱記』を拝読していると
とうていこんな長丁場は自分には無理だと思ってしまう。
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by kuro-kmd
| 2011-06-13 01:40
| behind the scenes